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生物多様性の保全と回復

マテリアリティ

生物多様性

方針GRI:101-1

不二製油グループは、生物多様性への基本的な考え方と行動指針についてまとめた「不二製油グループ生物多様性方針」※1を2023年3月に策定しました。本方針に基づき、バリューチェーン上の生物多様性への負の影響を回避または軽減し、自然を基盤とした解決策で自然生態系の保全と回復に取り組みます。ステークホルダーとの共創を重ね、2030年までに生物多様性を回復軌道に乗せ、2050年までに自然と共生する社会の実現※2に向けて貢献していきます。

  • ※1 不二製油グループ生物多様性方針(PDF形式、275KB)
  • ※2 国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、2050年のビジョンとして「自然と共生する世界」、その中間目標である2030年ミッションとして「自然を回復軌道に乗せるために、生物多様性の損失を止め、反転させるための緊急行動をとる」ことが掲げられた。2030年ミッションはG7で合意された「ネイチャーポジティブ(自然再興)」と同趣旨の概念。

ガバナンスGRI:101-3

当社グループは、取締役会の諮問機関であり代表取締役社長 兼 CEOが委員長を務めるサステナビリティ委員会※1にて、ESGマテリアリティ※2「生物多様性」について、マルチステークホルダーの視点で審議・監督し、取締役会へ答申しています。また、ESG部門長管掌のもと、同重点項目「生物多様性の保全と回復」の取り組みについて部門横断的に推進しています。
また、先住民や社会的マイノリティ、地域コミュニティなど、当社グループの事業活動によって影響を与え得る人々へは以下の方針に従って対応し、サステナブルな食の未来に向けた、ステークホルダーとの継続的な対話と協働の基盤づくりに努めています。

戦略

食品メーカーである当社グループは、植物を主とする原料生産地周辺の自然生態系への影響のみならず、事業拠点における水資源利用と排水、エネルギー使用とCO2排出など、さまざまな形で自然や生態系サービスに依存し、インパクトを与えています。それらを把握し、自然生態系の保全と回復に取り組むことが、サステナブルな食の未来および事業の持続可能性に不可欠であると認識しています。
2022年度に評価した当社グループ全事業に関する一般的な自然関連課題(土地利用転換、生態系への影響、気候変動、水資源など)においては、パームまたはカカオが関連していることが分かりました。2023年度はTNFD推奨のLEAPアプローチ※1に基づき、パームおよびカカオ生産国における自然や生態系サービスへの依存とインパクトについて、地理情報システム(GIS)を使ってロケーションベースで分析評価し、当社グループのバリューチェーン上で注意すべき観点および優先地域を把握しました。特定した自然関連のリスク※2および機会※3については環境マネジメントページの「不二製油グループのバリューチェーン上の自然関連リスク・機会」をご参照ください。
当社グループは、引き続き自然生態系の保全と回復に取り組み、ネガティブインパクトを回避・低減するとともに、ポジティブインパクトを与える技術や製品開発を推進していきます。

  • ※1 TNFDにより開発された自然との接点、自然との依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題の評価のための統合的なアプローチ。
  • ※2 組織およびより広範な社会の自然への依存やインパクトから生じる、組織にもたらされる潜在的な脅威。
  • ※3 自然にプラスの影響を与えたり、マイナスの影響を軽減したりすることで、組織や自然にとってのプラスのアウトカムを生み出す活動。

リスク管理GRI:101-2

指標と目標GRI:101-1

〇:目標に対して90%以上達成、△:目標に対して60%以上達成、×:60%未満

2023年度目標 2023年度実績 自己評価
パームおよびカカオに関する自然および生態系サービスへの依存とインパクト評価の検討 パームおよびカカオ生産国における自然および生態系サービスへの依存とインパクト評価ならびに自然関連リスク分析の実施

考察

2023年度は、当社グループの主原料であるパームおよびカカオの生産国における自然資本や生態系サービスへの依存とインパクトについて、地理情報システム(GIS)を用いてさまざまな分析指標で分析し、事業と自然との関係性を把握するとともに、当社グループのバリューチェーン上で注意すべき観点および優先地域について整理しました。
また、全事業に関わる重要課題から自然関連リスクを洗い出し、リスクから想起される当社グループへの影響例およびそれらへの戦略についてリスト化しました。

Next Step

2023年度に実施したパームおよびカカオの自然関連リスク分析結果に基づき、2024年度は以下の目標に取り組みます。

  • 推進中のサステナブル調達活動や目標への追加的対応策や目標・モニタリング指標の検討

具体的な取り組み

パームおよびカカオの自然関連リスク分析結果GRI:101-2, 4, 5、304-2, 3

2023年度、TNFDが提唱するLEAPアプローチに沿って、パームおよびカカオ生産国での自然との接点、自然および生態系サービスへの依存とインパクトを評価し、優先地域や注意すべき観点を把握しました(LEAPアプローチのL3、L4、E2、E3、E4に該当)。分析結果の表における「重要度」は、複数の分析指標によって評価した生産国における一般的なパームまたはカカオの自然への依存度とインパクトの重要性を示したものです。本分析により抽出された自然関連リスクは、当社グループのバリューチェーンに限った特有のリスクではなく、生産国における一般的なリスクです。なお、事業戦略上、具体的な地域や地名については開示を控えています。

  • ※ TNFDにより開発された自然との接点、自然との依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題の評価のための統合的なアプローチ。

分析ステップ

Step 1 農地空間データ整備 グローバルスケールの農地データおよび当社グループ調達国の農地データを整備
Step 2 文献調査 国際機関のレポートや論文などの文献を精査し、当該コモディティと関係性の深いインパクト要因、自然の状態、生態系サービスを特定し、それに基づき突合するGISデータなどを選定
Step 3 農地空間データでの分析 パーム・カカオ生産国の農地を対象にGISデータにより分析
Step 4 空間データ画像の作成 Step 3の分析結果の画像を出力
Step 5 結果整理 優先地域を選定、注意すべき観点を整理

パーム生産国における自然関連リスク分析結果

◎:重要度が高い、〇:重要度が中程度、△:重要度が低い、×:データ不足等

  • ※ 画像からPDFファイルへリンクします。

依存

自然への依存関係においては、洪水リスクの重要度が高いことが分かりました。また、タイおよびインドネシアに水ストレスが高い地域が一部あること、インドネシアの一部地域では水質浄化の生態系サービス以上に、窒素による水質汚染が進んでいる可能性があることが分かりました。

インパクト

自然へのインパクトの面では、原生林/泥炭地/マングローブ/湿地など、生態系の観点から重要度の高い土地を農園へ改変することによるインパクトの重要性が高いことが分かりました。泥炭地などの開発はGHG排出・大気汚染の観点からも影響が大きいことが確認されました。インドネシアの一部は泥炭地・マングローブ・湿地、森林火災といった広い観点で注意が必要な地域であること、またインドネシアの別の地域では原生林や泥炭地、湿地との重複の可能性が高いことも確認されました。
保全優先度や保護地域の観点からは、タイ南部や東マレーシア北部が特に重要な地域であり、汚染などが起きた際、周辺の生態系に与えるインパクトが大きいことが考えられます。今回のロケーション分析結果から、当社グループが2016年からWild Asiaと協働で支援する東マレーシア北部は、保全優先度が高い地域であることが改めて分かり、現地の小規模農家に向けた環境再生型農業導入支援の意義を再認識しました。
近年、インドネシアやマレーシアの一部の地域で森林減少が目立っています。2018年からインドネシアのスマトラ島で展開しているランドスケープ活動地域は、自然保護区またはIUCN保護地域管理カテゴリーのⅠ・Ⅱに該当する種が存在し、先住民も多く居住するセンシティブな地域ですが、スマトラ島の中でも樹木被覆減少率が限定的であることを確認しました。2022年から参画しているマレーシアのサザン・セントラル・フォレスト・スパイン・ランドスケープ活動地域は、樹木被覆減少率が大きく、生物多様性の重要性が高い地域であることが分かりました。生産地域全体の持続可能性にポジティブなインパクトを生み出せるよう、引き続き、これらの活動に取り組んでいきます。
なお、先住民・コミュニティ地域の観点では、インドネシアの一部地域で注意が必要なことが分かりました。

パームに関する主な依存とインパクトの関係図

カカオ生産国における自然関連リスク分析結果

◎:重要度が高い、〇:重要度が中程度、△:重要度が低い、×:データ不足等

  • ※ 画像からPDFファイルへリンクします。

依存

自然への依存関係においては、洪水リスクや土壌・堆積物保持、土壌の質の維持の重要性が高いことが分かりました。土壌侵食は洪水リスクをさらに増大させる恐れがあり、また土壌が薄い地域で洪水や土壌侵食が起きた場合、土壌の質にも深刻な影響を与える危険性があります。これらの指標はコートジボワールの一部地域で高く、災害リスク・土壌の肥沃度の観点から調達リスクにつながる可能性があることが分かりました。

インパクト

自然へのインパクトの面では、西アフリカで、原生林、泥炭地、湿地など生態系の観点から重要度の高い土地を農地へ改変することによるインパクトの重要性が高いと判明しました。泥炭地などの開発はGHG排出・大気汚染の観点からもインパクトが大きく、重複の際は注意が必要です。またコートジボワールの一部の農地は、IUCN保護地域管理カテゴリーⅡの保護地域と重複している可能性があることが分かりました。今回のロケーション分析結果から、生態系の十全性の観点で、ガーナおよびコートジボワールで展開する植樹活動の意義を再認識しました。

カカオに関する主な依存とインパクトの関係図

生物多様性の課題解決に向けた取り組み

以下の生物多様性課題に対し、バリューチェーン全体を通して、ネガティブインパクトの低減とポジティブインパクトの創出の両面で取り組んでいます。

森林の破壊防止と再生

  • パーム油産地:衛星写真による森林状況モニタリング、保護価値の高い森林(HCV)や高炭素貯蔵(HCS)の特定と保護※1
  • カカオ産地:植樹活動、森林モニタリング※2
  • シアカーネル産地:緑地保全※3

農地および周辺の生態系への影響、化学物質の使用削減

  • パーム油産地:農業生産工程管理(GAP)、ユニフジ(マレーシア):生態系を活かした有害生物や害虫管理、認証油の拡大、小規模農家の環境再生型農業導入支援※1
  • カカオ産地:アグロフォレストリーやGAP導入支援※2
  • 加工工程で副生される大豆ホエイをアップサイクルした土壌改良剤の開発と普及※4

気候変動(CO2排出削減、廃棄物削減)

  • シアカーネル産地:搾油後の副産物(油粕など)の燃料利用※3
  • グループ事業拠点での省エネや再生可能エネルギー導入によるCO2排出量の削減、工程改善や汚泥の含水率低減による廃棄物量の削減※5
  • 清掃工場で回収したCO2(CCU)を活用した大豆育成研究※6
  • えんどう繊維の高度利用による機能性食品素材の開発※7
  • 食品のおいしさを長期保存する技術や製品の開発※7
  • 油脂酵母によるパーム油代替油脂の開発

水資源の利用

  • グループ事業拠点での水使用量の削減※5

ステークホルダーの意識啓発・キャパシティビルディング

  • 原料産地・農家:ランドスケープイニシアチブ※1、女性農家のエンパワーメント※2※3、女性農家向け緑地管理研修※3
  • サプライヤー:NDPEに向けたエンゲージメント※1、労働環境改善プログラム導入※1
  • 従業員:社内コミュニケーションサイト(日本語・英語・中国語・ポルトガル語)での啓発やサステナビリティ研修(国内外グループ会社)の実施

関連資料