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フードロスの削減とアップサイクル

マテリアリティ

サーキュラーエコノミー

ガバナンス

不二製油グループは、取締役会の諮問機関であり代表取締役社長 兼 CEOが委員長を務めるサステナビリティ委員会※1にて、ESGマテリアリティ※2「サーキュラーエコノミー」について、マルチステークホルダーの視点で審議・監督し、取締役会へ答申しています。また、最高技術責任者(CTO)管掌のもと、同重点項目「フードロスの削減とアップサイクル」の取り組みを推進しています。

戦略

今後、世界の人口増加および気候変動や生物多様性の喪失による食糧需給のひっ迫が危惧される中、限りある食資源を効率よく使用することは食品素材メーカーにとって重要な課題です。また、フードロスの削減は、SDGsの目標12のターゲットとしても明記されており重要なグローバル社会課題と認識しています。これらの社会課題へ対応することは企業の責務であり、対応を怠った場合は、社会からのレピュテーションが低下するリスクが高まります。
当社グループは食品中間素材メーカーとして、顧客の製品の賞味期限延長に貢献する製品を提供することで、最終消費者における食品廃棄率を低減するとともに、アップサイクルによる資源の有効活用を目指し、以下2点の目標に取り組みます。

  • バリューチェーン上のフードロス削減への貢献
  • 廃棄物や副産物を原料に付加価値のある製品の創出

リスク管理

研究開発部門では、日々変化するさまざまな社会ニーズを素早く捉え、課題解決するために以下のような取り組みを実施しています。

  • 課題解決に貢献する商品コンセプトとアプリケーション処方をパッケージにした顧客提案活動

指標と目標

〇:目標に対して90%以上達成、△:目標に対して60%以上達成、×:60%未満

2023年度目標 2023年度実績 自己評価
食品のおいしさを長期保存する技術や製品の開発と市場拡大 冷凍耐性を向上させたホイップクリームや加熱変性耐性を強化した調理用クリームなどを4件上市
副産物の有効利用による新しい機能付与や価値の追求 大豆ホエイ由来土壌改良剤ソイビオMAの売上を拡大、大豆多糖類の新機能を提案

考察

賞味期限延長につながる商品の品質保持への理解と連携が円滑に進んだ結果、新規クリーム類が複数社に採用されました。また顧客の中には新たな売り場への商品展開も可能となる事例がありました。

Next Step

できたてのおいしさをより長期間損なわない素材、技術の開発や廃棄物の積極的な有効利用を追求することに主眼を置き、以下の2024年度目標に取り組みます。

  • 食品の日持ちや賞味期限を延長する手法や製品の開発
  • 廃棄物の積極的有効利用による新しい機能や価値の追求

具体的な取り組み

おいしさを維持する素材の開発

食品の賞味期限の延長は、国がフードロス削減に向けて推進する重要施策の一つです。不二製油(株)は、品質維持を可能にする技術や素材の提供を通じ、レトルト食品など長期間保存可能な食品をさらにおいしく、バリエーション豊かにすることで、フードロス削減にも寄与しています。
近年、社会的にフードロス対策や通販などの需要増により冷凍解凍による喫食が増加する一方で、冷凍解凍後のホイップクリームの品質はチルド品レベルには至らず、食感や乳味の低下が課題となっていました。そこで同社の冷凍耐性向上技術に加え、新たなおいしさ向上技術も加えたフローズンチルド用ホイップクリームを開発しています。2023年度は、2022年度に開発した調理用クリーム「グランデリカ🄬」の加熱耐性をさらに強化した「グランデリカ🄬クリスタ」を開発しました。これにより顧客評価を獲得し採用へとつながり、販売数量も伸長しました。

グランデリカ🄬クリスタを使用した明太クリームパスタ

アップサイクルによる機能性食品素材の創出

当社グループでは、植物原材料から油脂、タンパク質などの成分を分離し、食品素材として販売しています。原料の高度利用は限られた食資源を有効に活用する上で極めて重要な課題です。例えば大豆では、大豆油を搾油した後、大豆タンパク質を分離し、さらに副生されるおからから水溶性大豆多糖類を分離するなど、創業以来、アップサイクルによる食品残渣の削減と高付加価値な食素材の創出に努めてきました。
利用価値が低い澱粉粕の高度利用もその一例です。春雨など麺類の原料となるえんどう澱粉を製造する過程では、大量にえんどう繊維が副生されます。当社グループは利用価値が低いえんどう繊維のアップサイクルを目指して研究に取り組み、水溶性えんどう多糖類を開発しました。水溶性えんどう多糖類が酸性乳飲料および酸性植物タンパク飲料の安定剤としての機能を有することを解明しています。ドイツに建設したえんどう多糖類の専用工場にて、2023年春に商業生産を開始しました。

  • ※ 原料の利用度を高め、残渣を減らすこと。

水溶性えんどう多糖類の専用工場(フジ ブランデンブルク(ドイツ))

アップサイクル素材「ソイビオMA」の展開

不二製油(株)は、汚染土壌対策の分野において、資源循環型のバイオレメディエーション用浄化促進剤「ソイビオMA」を上市しました(販売代理店:昭栄薬品(株))。ソイビオMAは汚染物質を分解する微生物の栄養源として働き、特に揮発性有機化合物質(VOCs)や油に汚染された工場敷地内などの土壌のバイオレメディエーションに有効です。また、従来の土壌改良薬剤より安価なため施工コストの低減が可能で、汚染された地下水の浄化案件など、年間数件ですが安定した採用実績があります。当社はPlant-Based Food(植物性食品)として注目されている大豆ミートをはじめ、栄養機能に優れる大豆のタンパク質やペプチドなどの食品素材を長年提供しています。「ソイビオMA」の原料である大豆ホエイは、食品加工においてタンパク質を分離した後、加熱濃縮工程を経て副生されるもので、天然の栄養成分を豊富に含んでいます。
さらに、大豆ホエイが持つ微生物活性化の機能により土壌の微生物が増殖することで、土壌の健康に貢献することが期待でき、農業分野への参入を目指しています。2023年度には肥料登録を完了しましたが、2024年度には農業向け素材の商品化を進めていきます。

  • ※ 微生物の作用で環境汚染を修復する技術。

ソイビオMA