CEOメッセージGRI:2-22
おいしさと植物性素材にこだわり、サステナブルな食の未来を共創
不二製油グループは創業当時から植物性素材にこだわり、「人まねはしない」という挑戦と技術革新の信念とともに歩みを進め、豊かな食生活の発展に貢献することで成長してまいりました。いま世界は、気候変動や生物多様性といった環境課題や人口増に伴う食糧問題、そして人々が心身ともに健康で生き続けるという広義の人権課題まで、食にまつわる課題であふれています。これらに真摯に向き合うとともに、いのちを支える食に携わる企業の一経営者として、その解決に果敢に挑む決意です。私たちは、「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します。」をビジョンに掲げています。世界14ヵ国の従業員がグループの強みを融合しながら、ステークホルダーとともに社会課題を解決する、こうした試みを不二製油グル-プの成長ドライバーと位置づけ、持続可能なフードシステムの実現と発展に取り組んでいます。
中期経営計画「Reborn 2024」では、2022年度からの3年間を「新たな価値を生みだす企業グループへ生まれ変わるための経営基盤強化の期間」とし、基本方針の一つとしてサステナビリティの深化を掲げました。取締役会の諮問機関であるサステナビリティ委員会では、ESGマテリアリティと事業戦略との連動性を高めながら議論を深め、環境や社会へのプラスの価値創出と中長期的な企業価値向上に取り組んでいます。
2023年度を振り返りますと、従業員の努力の積み重ねのおかげで、経営目標として掲げたパーム農園までのトレーサビリティ※1およびCO2排出量削減※2のいずれも当初目標を達成しましたが、より高い水準へ到達できるよう取り組みを継続していきます。サステナブル調達においては、当社グループが調達するパーム油のうちRSPO認証油※3の占める割合が60%に達しました。持続可能なパーム油への需要の高まりを実感しその期待に応えるためにも、2024年1月マレーシアのJohor Plantations Group Berhadと合弁会社を設立することを決定しました。今後は高品質かつ持続可能なパーム油の安定供給体制を一層強化し、グローバルでますます高まるRSPO認証油へのニーズに応えてまいります。
また、これまで培った技術の融合により、当社ならではのおいしさを追求した植物性食品素材の開発を進めており、食の多様性と新たな食のシーンを創造し、サステナブルな食の選択肢を一段と広げました。肉らしい繊維感や口どけを楽しんでいただける製品として「2022年日経優秀製品・サービス賞」の最優秀賞を受賞したプライムソイミートシリーズは、昨年度新たに3製品拡充しました。動物性食品の満足感を植物性で表現できる独自技術MIRACORE®関連では、2021年の豚骨スープ風だしに続き、魚介だしタイプを発売しました。販売領域では、資本業務提携先と共同で日本最大級のPBF食材関連サイトcotta tomorrowを立ち上げ、消費者の皆様へ直に豆乳クリームバターなどヘルシーでおいしいPBFをより身近に味わっていただく機会を増やしました。研究領域においては、脳機能や健康に貢献する素材や、パーム油およびカカオの代替素材、環境に配慮した食の供給技術など、未来を生きる人々の食も見据えた開発を進めています。
このような食というグローカルな視点が求められる事業において、社会課題を解決しながら新たな価値を生み出し続ける源は一人ひとりの従業員です。それゆえ、ESGマテリアリティに掲げた「人材確保・育成」「DE&I」は、サステナビリティ経営において重要な2大テーマといえます。私は、2022年から国内外で対話集会を延べ52回行い、さまざまな現場の従業員の声を聞いてきました。若手からの積極的で意志のある声を大変うれしく思い、同時に従業員一人ひとりの想いや期待に応えていく意を強くしました。グローバルに力を発揮できる人材の育成・登用に注力するとともに、多彩な能力や多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍し続けられる職場環境と成長機会の提供を強化していく所存です。従業員エンゲージメントを向上し、グループとしての一体感をより一層醸成していくために、2024年6月にCAO(最高総務責任者)を設置し、中長期的視点で経営戦略と連動した人材基盤の強化を図ってまいります。
企業を取り巻く外部環境の急速な変化の中、従業員・取引先・株主・投資家をはじめとする多くのステークホルダーは、自然環境・健康・働き甲斐・サステナビリティ課題への対応が、経営の根幹に位置づけられるべきものとの認識に変わってきています。すなわち、企業のサステナビリティと社会のサステナビリティとの同期化は、持続的な企業価値向上と表裏一体であります。当社は、これからもステークホルダーの皆様との共創を大きく育みながら、トレーサブルで持続可能なグローバル供給体制を確立していきます。また、日本で培ってきた技術力と社会課題解決型製品は、世界のサステナブルな領域でお役に立てる可能性を秘めており、今後も各地域の食の課題に貢献する当社ならではのソリューションをいち早くお届けし、サステナブルな食未来の実現とグループの持続的成長を目指してまいります。
不二製油グループ本社株式会社
代表取締役社長
最高経営責任者(CEO)
サステナビリティ委員会 委員長
- ※1 農園までのトレーサビリティ:2024年度目標85%、2023年度実績95%。
- ※2 CO2排出総量(スコープ1+2):2024年度目標23%削減、2023年度実績29%削減(基準年度:2016年度)。
- ※3 持続可能なパーム油のための円卓会議(Roundtable on Sustainable Palm Oil)による認証油。