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心身の健康課題の解消

マテリアリティ

健康と栄養

ガバナンス

不二製油グループは、取締役会の諮問機関であり、代表取締役社長 兼 CEOが委員長を務めるサステナビリティ委員会※1にて、ESGマテリアリティ※2「健康と栄養」について、マルチステークホルダー視点で審議・監督し、取締役会へ答申しています。また、最高技術責任者(CTO)管掌のもと、同重点項目「心身の健康課題の解消」の取り組みを推進しています。

戦略

超高齢化社会を迎え、医療費の増大・社会保障制度の崩壊が危惧される中、健やかに、満ち足りて暮らすことへの意識が高まり、心と身体の健康を両立でき、健康寿命の延伸につながるソリューションが求められています。当社グループは植物性油脂・タンパクを中心とした「食」のおいしさと健康に資する食素材を提供する会社として、これらのニーズに応えることは社会的使命と考えています。
乱れた生活習慣、過剰な糖質や塩分の摂取、過食・貧食や運動不足が続けば、心や身体はさまざまな不調を生じます。例えば過剰な糖質摂取は、多くの重篤な疾患の温床となる糖尿病や肥満などの生活習慣病の発症や、認知機能の低下といったリスクを孕んでいます。一方で、未病状態を健康な状態に改善できるような研究や製品を実現することで、人々が年齢を重ねても、しなやかに動く身体で、したいことができ、自らのありたい姿になり、社会的つながりを持ち続けられるようになると考えています。このような食による未病予防という考えのもと、当社グループは世界の人々の心身における健康課題の解消に貢献します。また、これら一連の活動が企業価値の向上にもつながると期待しています。

  • ※ 食欲不振や心身の痛み、気分の低下など。軽度不調や未病状態ともいう。

リスク管理

当社グループは、食を介して心身の健康課題解決に取り組み、未病状態から健康な状態に改善できるような研究や製品を実現するために、ヒトでの効果実証は欠かせないと考えました。ヒトを対象とした研究は高い倫理性とプライバシー保護の観点が求められることから、研究倫理教育(APRIN)を受講した医師や有識者、一般の方を委員とする倫理審査委員会(IRB)を設置し(厚生労働省報告システム登録済)、当社グループが関わる全てのヒト臨床試験を審査するとともに試験実施後の追跡評価も実施しています。研究所では、健康訴求に資するさまざまな食素材の中からDHA・EPA※1や大豆ペプチド※2に注目し、これらを食品として摂取するメリットを明らかにするために、概念実証(Proof of Concept、PoCともいう)としてヒト試験に取り組んでいます。例えば、酸化されやすいDHAでは、それを極めて酸化しにくくすることによる健康メリットがあるかどうかを、明らかにしようとしています。

  • ※1 DHA・EPA:ドコサヘキサエン酸・エイコサペンタエン酸の略称。体内での合成効率が低いために、食物から摂取することを推奨される脂肪酸の一つで、記憶力・集中力の維持、中性脂肪低下など、さまざまな健康効果があることが報告されている。
  • ※2 ペプチド:タンパク質の分解過程でできる物質のこと。大豆のタンパク質を酵素分解することで生成されるペプチドを大豆ペプチドと呼ぶ。

指標と目標

心身の健康課題の解消

〇:目標に対して90%以上達成、△:目標に対して60%以上達成、×:60%未満

2023年度目標 2023年度実績 自己評価
摂取が簡便な形態であるソフトカプセルを用いて、プロレア(Fresh DHA)と一般油(general DHA)の比較検討を社内PoCで実施 プロレア(POV=0.5)と一般DHA油(POV=12、食品衛生法基準内)を用いて、健常者でのボランティア試験を実施(プロレア群、一般油群それぞれ21名参加、摂取期間は2ヵ月間)
抗酸化処理有無で生体に与える影響について、一つ以上の酸化物マーカーを見出し、見える化を目指す(差別化・優位性の確立) プロレアを摂取前と後で比較した結果、栄養状態の改善(血中アルブミンの増加)と骨代謝マーカーの亢進を確認
  • ※ 過酸化物価、Peroxide valueの略。保存状態や自動酸化による劣化具合が分かる。

トランス脂肪酸含有量の低減

〇:目標に対して90%以上達成、△:目標に対して60%以上達成、×:60%未満

2023年度目標 2023年度実績 自己評価
パルマジュ エディブル オイル(マレーシア)、フジオイル(シンガポール)、不二製油(張家港)有限公司(中国):変更対象全製品のトランス脂肪酸の低減(2g-TFA/100g-oil 以下)
  • パルマジュ エディブル オイル(マレーシア)、不二製油(張家港)有限公司(中国)での対象製品は全て対応を完了
  • フジオイル(シンガポール)は2024年9月頃に対応完了の見込み

糖質低減

〇:目標に対して90%以上達成、△:目標に対して60%以上達成、×:60%未満

2023年度目標 2023年度実績 自己評価
低糖質化/タンパク強化した食品の市場拡大 栄養強化などのコンセプト提案を推進、ベーカリーや加工食品市場にて大豆たん白の採用を達成

考察

心身の健康課題の解消

酸化が進んだ一般的なレベルのDHA油脂および酸化を極めて抑えることができたDHA含有油脂の摂取では、いずれも健康状態を示す範囲からの逸脱は見られませんでした。一方で酸化を極めて抑えたDHA油脂を摂取することで、脂質代謝系のみならず、生体抗酸化やエネルギー代謝に関わる生体マーカーにも有意な変動が認められました。今後、酸化しないことの優位性とDHAの機能性に焦点を当てて研究を進めます。

トランス脂肪酸含有量の低減

世界各国での法規制化やトランス脂肪酸低減への顧客の理解の深化、グループ一丸で推進する体制の構築により、2023年度はパルマジュ エディブル オイル(マレーシア)、不二製油(張家港)有限公司(中国)において全ての製品のトランス脂肪酸低減が完了しました。
フジオイル(シンガポール)では、顧客との調整は終えており、2024年上期中を目途に対応が完了する予定です。
風味・機能性を維持しながら低トランス脂肪酸製品へ変更することが重要であり、過去の知見を活かしながら、2023年度までに海外の対象グループ会社14社のうち13社で低トランス脂肪酸製品への変更が完了しています。

糖質低減

米飯や麺において、低糖質化やタンパク強化は消費者ニーズがあり、代替素材として大豆たん白の活用が普及しつつあります。近年はドラッグストアでも栄養健康訴求商品の販売が活性化しており、「おいしくたんぱく補給」をコンセプトに提案活動を行ったことで、ドラッグストア専売商品の菓子に当社グループの大豆たん白が採用されました。

海外グループ会社 低トランス脂肪酸製品への切り替え完了の目標時期
2019年以前 2020年 2021年 2022年 2023年
フジオイル(シンガポール) 24年度
上期
パルマジュ エディブル オイル(マレーシア) 完了
不二製油(張家港)有限公司(中国) 完了
ウッドランド サニーフーズ(シンガポール) 完了
フレイアバディ インドタマ(インドネシア) 完了
ハラルド(ブラジル) 完了
フジオイル ヨーロッパ(ベルギー) 完了
フジ グローバル チョコレート(M)(マレーシア) 完了
フレイアバディ(タイランド) 完了
インダストリアル フード サービシズ(オーストラリア) 完了
フジオイル(タイランド) 完了
天津不二蛋白有限公司(中国) 完了
フジ ベジタブル オイル(米国) 完了
ブラマー チョコレート カンパニー(米国) 完了

Next Step

食を通じ健康課題を解消するには、提供する食素材の健康機能に関するエビデンスと優位性を確立し、消費者の「摂取したい」というモチベーションを創出することが重要です。これらの課題を念頭に置き、以下の2024年度目標に取り組みます。

  • 心身の健康増進に寄与する食品の市場拡大
  • 安定化DHA・EPAの健康機能面における差別化・優位性の確立

具体的な取り組み

極めて酸化が抑えられたDHA油を摂取するメリット

認知症予防への効果が期待されるDHA油脂の摂取形態として、一般にはソフトカプセル様で機能油脂が包含されたものが用いられます。しかしながら、既存のDHA・EPA含有ソフトカプセルは油脂の酸化劣化に伴う特有の臭気(ω-3系脂肪酸の酸化劣化特有の魚臭い臭い)が課題となっており、カプセル摂取後の曖気に感じる油脂劣化臭は、摂取中断の理由にも挙げられています。
当社グループでは、DHA油脂の酸化劣化を極めて抑えたプロレアは、ソフトカプセル形態として摂取しても、曖気に臭いや不快臭を全く感じないのではないか、と考えました。そこで、プロレア、または一般のDHA油脂を包含したソフトカプセルをボランティアに摂取いただきました。試験中に被験者に行ったアンケート(被験者はプロレアか、一般DHA油のどちらを摂取しているかが分からない状態で実施)によると、DHA油脂の酸化劣化を抑えたプロレアを摂取した群では、曖気に臭いや不快臭を全く感じていなかったことが分かりました。ところが、一般DHA油を含むソフトカプセルを摂取した被験者では、曖気に臭いを感じると回答した割合は67%、その臭いが不快と回答した割合は93%であったことから、臭いにおけるプロレアの優位性が示されました。今後は、DHAの生理機能に加えて、DHA油の酸化を感じるメカニズムや、DHAを好んで摂取したいと思う情動に関しても研究を進めます。

糖質が少ない食品の拡大

日本市場において、糖質の多い食品(主食系食品や菓子)の糖質の一部をタンパク質に置き換えた、栄養バランスに優れる食品の提案・提供に取り組んでいます。例えば、主食のパンに大豆たん白素材を配合することで、糖質の一部をタンパク質に置換した高タンパクなパン(16.2g以上/100g配合)を提案しています。タンパク質をおいしく無理なく摂取できるとの評価をいただき、複数の顧客から大豆たん白素材を配合した健康パンが発売されています。

タンパク質を強化した食事メニュー

砂糖低減チョコレート

市場調査会社IRIによると、北米ではインフレなどによる価格上昇によりチョコレート市場全体の需要が減退したことに伴い、シュガーフリーチョコレートの販売量も減少しているといわれています。しかし、ブラマー チョコレート カンパニー(米国)の健康・ウェルネス部門全体でのチョコレートの販売は、引き続き増加傾向にあります。
同社には、低糖・無糖・減糖チョコレート製品群や天然または人工的な甘味材を使用したチョコレート製品群があり、2022年比で低糖・無糖・減糖チョコレート製品群では+3%の売上、自然甘味材使用のチョコレート製品群では+23.3%の売上となっています。また、乳原料不使用チョコレートの販売も増加傾向にあり、2022年比で市場の売上高+17.9%となりました。
これらの製品を通じて健康課題解決を今後も推進します。またR&Dでは引き続き砂糖代替での新規原料を探索し、顧客ニーズに継続して対応していきます。