多様な植物性素材の創造
マテリアリティ
サステナブルな食資源の創造
ガバナンス
不二製油グループは、取締役会の諮問機関であり代表取締役社長 兼 CEOが委員長を務めるサステナビリティ委員会※1にて、ESGマテリアリティ※2「サステナブルな食資源の創造」について、マルチステークホルダーの視点で審議・監督し、取締役会へ答申しています。また、最高技術責任者(CTO)管掌のもと、同重点項目「多様な植物性素材の創造」の取り組みを推進しています。
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※1 ガバナンス、戦略および指標と目標、リスク管理>ガバナンス
https://www.fujioilholdings.com/sustainability/sustainability_management/
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※2 ガバナンス、戦略および指標と目標、リスク管理>戦略および指標と目標
https://www.fujioilholdings.com/sustainability/sustainability_management/
戦略
当社グループは、創業間もない頃から将来の人口増加によって引き起こされる食資源の問題を考え、大豆の可能性を追求し、動物性タンパク源を補う植物性タンパク素材を開発してきました。2050年には世界人口は97億人に達すると予測されており、地球環境の負荷低減につながる健康的な植物性タンパク素材の開発を通じ、食資源不足の問題にソリューションを提供することは、当社グループにとって創業以来の使命といえます。また、タンパクのみならず、油脂をはじめとする多様な植物性素材やその組み合わせにより生まれる当社グループの製品は食の選択肢を広げ、誰もが心から食事を楽しめる世界の実現に貢献しています。これら一連の活動は、社会課題の解決だけでなく、企業価値の向上にもつながると期待しています。
昨今、心身の疾患や地球環境問題、食資源の偏在などの社会課題への関心がグローバルで高まっています。単に動物性を植物性へ置き換えるのではなく、人と地球の健康を考えたおいしくて共感される植物性食品の提供を通じて、社会課題の解決を目指します。当社グループが取り扱う植物性の素材と、保有するさまざまな加工技術を組み合わせることで、多様な食文化に適応した植物性食品を提供していきます。
リスク管理
研究開発部門では、日々変化するさまざまな社会課題を素早く捉え、課題解決の機会を創出するために、以下のような取り組みを展開しています。
- 部署を超えた有志チャットグループによる最新情報の交換
- 産官学連携によるプラントベースフードの啓発
指標と目標
〇:目標に対して90%以上達成、△:目標に対して60%以上達成、×:60%未満
2023年度目標 | 2023年度実績 | 自己評価 |
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新たな価値を付与した次世代大豆ミート素材の開発 | 「プライムソイミート※シリーズ」を拡充し、新たに3種を上市 | ○ |
顧客や社会の課題解決に貢献する大豆ミート以外の植物性素材の開発および市場開発 | 植物性のホイップクリームやチョコレート、だし製品など7件を上市 | ○ |
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※ プライムソイミート:「肉のような繊維感や噛み応え」と、「口どけ」の両立を実現した、本格食感のおいしい大豆ミート素材。
考察
「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します。」という「不二製油グループ憲法」のビジョンの実現に向け、当社グループがこれまで培ってきた風味や食感を組み立てる技術を駆使し、組み合わせることで、従来より品質を向上させた植物性素材を開発しました。顧客からも肉様の食感や素材そのものの風味をご評価いただき、さまざまな商品に採用されています。
Next Step
単に動物性を代替する植物性素材を提供するのではなく、人と地球の健康に寄与し食の歓びにつながるおいしさを創造することが重要です。この課題への対策として、以下の2024年度目標に取り組んでいきます。
- 価値観の多様化に貢献する新しい植物性素材の創出
- 持続可能な植物性タンパク源の供給
具体的な取り組み
不二製油グループ憲法のビジョン実現に向けたフラッグシップ「GOODNOON」
2022年7月、不二製油グループ憲法のビジョン※1を牽引する、植物性食品製品群のフラッグシップ「GOODNOON」※2を発表し、Plant-Based Foods(以下、PBF)市場拡大の取り組みを開始しました。GOODNOON製品は、当社グループの植物性食品の中でも「驚きのおいしさ」「新規性」「わかりやすさ」「人と地球の健康」「社会課題解決型」の5つの要件を満たす厳選された製品群です。さまざまな社会課題の解決に向け、当社グループ独自の素材と技術を組み合わせ「驚きのおいしさをつくる」をよりクリエイティブに、スピード感を持って展開していきます。
- ※1 2023年4月「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します。」に改定。
- ※2 https://www.goodnoon.jp/
長年の技術を融合させた次世代植物性タンパク素材の開発
長年培った油脂、油脂製品、大豆たん白素材の開発技術を駆使し、植物性食品素材のおいしさを活かしつつ食資源不足や地球環境問題の解決に寄与する製品の開発に努めています。
2023年度は、これまでのイメージを覆す一つ上のおいしさを追求した大豆ミート「プライムソイミートシリーズ」に、新たに3種を追加しました。油脂とタンパクの加工技術を応用して豆臭さを低減した上、お肉のような弾力感と繊維感、心地良い歯ごたえを実現しました。
プライムソイミートブロックWN1
使用例:プラントベースチャーシュー
また、新たに開発した動物性原料不使用のホイップクリーム「ガトーレヴィスフリー」は、おいしいだけでなく、合わせる素材の風味を際立たせる特長もあります。すっきりとした口溶けで、どんな仕立てにも合うプレーンな味わいです。
ガトーレヴィスフリー
使用例:トロピカルムース(PBF)
チョコレート市場でも動物原料不使用製品の拡大が見込まれています。当社グループは、独自の素材と技術の融合により乳素材不使用でもミルキーさを持つチョコレートを開発しました。ミルク風味とホワイトの2タイプがあり、どちらもやさしい風味で組み合わせる素材の味を引き立てます。
プラントベースチョコレート ミルクタイプ
プラントベースチョコレート ホワイトタイプ
使用例:タブレットショコラ
使用例:抹茶テリーヌ
市場への提案による価値創出
不二製油グループ本社および不二製油(株)は、消費者の皆様の「食の選択肢」を広げ、PBFが当たり前になるように、これまで培ってきた技術を駆使し「驚きのおいしさ」を提供していきます。PBFの市場拡大を目指し、フラッグシップGOODNOONの指針について発表した「PBF戦略説明会」(2022年7月)を起点に顧客との共創活動を推進しています。
おいしいPBFをより身近に
株式会社ニュー・オータニ様
株式会社ニュー・オータニ様が運営される「ホテルニューオータニ」のレストランメニューに、当社グループの大豆たん白製品や豆乳関連製品を数多くご活用いただいています。
ホテルレストランでのPBFメニュー展開:左から「大豆ミートのトリッパ風トマト煮込み」「豆乳ヘルシープリン」「豆乳バスクチーズケーキ」
(画像:ホテルニューオータニ様ウェブサイトより)
株式会社cotta様
日本最大級の製菓製パン原料取り扱いサイトを運営する株式会社cotta様と資本業務提携をしています。
2023年5月に共同で立ち上げた、体にやさしい商品の販売や情報発信を行う「cotta tomorrow※」は、PBFをメインで扱う日本最大級規模のECメディアとなりました。当社グループの商品の魅力やおすすめのレシピを発信しており、PBFの認知や購買につながるきっかけを創出しています。豆乳クリームバター「ソイレブール」は、動物性原料不使用でヘルシーな商品として着実にリピーターを増やしています。
「cotta tomorrow」サイト(二次元コード)
ソイレブールシリーズ商品
(画像:cotta様ご提供)
株式会社ファミリーマート様
「地球環境に良いこと、役に立つことを少しずつでもできることから実行していこう。」という思いを込めた「ブルーグリーンプロジェクト」から、植物性由来の原材料を使用し、おいしさにもこだわったパン・デザートなどの商品を発売いただきました(2024年4月)。植物性由来の原材料を使い、おいしさを追求した商品は、消費者に新たな食の選択肢をご提供いただいています。
植物生まれのティラミス
(画像:ファミリーマート様ご提供)
ソイデニッシュ
(シナモンアップル&レーズン)
(画像:ファミリーマート様ご提供)
- ※ 上記の商品は現在販売していません。
株式会社角濱総本舗様
1927年の創業以来、高野山にてごまとうふを製造・販売されている同社は、2023年11月に新メニュー「角濱式高野山ヌードル」の提供を開始されました。本メニューは、同社のほか南海電気鉄道株式会社様、株式会社龍旗信様、不二製油(株)が共同し実現したものです。
ラーメンスープには、角濱ごまとうふのしぼり汁とMIRACOREⓇを活用して龍旗信様が仕上げた植物性スープベースが使用されています。米粉活用のグルテンフリー麺とともに、海外からの来訪者に喜んでいただける高野山ならではの「精進」ヌードルに仕上がりました。
角濱式高野山ヌードル 白湯味(現在、小田原店にて3つのメニューを提供)
動物性食品の満足感を実現する技術MIRACOREⓇ
2023年度に新設された風味基材事業開発部(2024年度から風味基材事業部)を主体とし、PBFニーズが高いインバウンド市場をはじめ、新たな市場でMIRACORE®※を活用した事業展開に挑戦しています。
2023年5月に開催されたG7広島サミットでは、国際メディアセンター内プレゼンテーションコーナーに力の源ホールディングス様と共同で出展し、MIRACOREⓇを活用した一風堂の「プラントベースラーメン」を海外メディアの方向けに提供しました。
2023年9月には、4商品目となる植物性のカツオ風魚介ダシを発売しました。江戸時代から続く老舗蕎麦店である総本家更科堀井様では、当社グループが2023年度に開発した新製品魚介ダシタイプMIRA-DashiⓇC400(カツオ風)をご活用いただき、月替わりで「ヴィーガンメニュー」をご提供いただいています。
これらの取り組みを通し、MIRACOREⓇが、日本食の世界への広がりを支える技術となり得ることを見出しました。
MIRA-DashiⓇ C400(カツオ出汁タイプ)
総本家更科堀井様の10月のヴィーガンメニュー「季節野菜たっぷりそば」
- ※ MIRACOREⓇは、植物性で動物性食品のような「満足感」を表現する技術ブランドです。
https://www.miracore.jp/
オランダのフードテック特化型大手ファンドへの出資
2021年度、不二製油グループ本社は子会社を通じ、オランダを本拠とするフードテック特化型大手ファンドUnovis NCAP二号ファンドに出資しました。同ファンドを運営するUnovis Asset Management B.V.は、動物性タンパクを代替する領域において、新たなフードシステム構築を追求するフードテック企業を初期段階で見出し成長に導くなど、同分野における草分け的存在です。また同社は、ESG分野で豊富な経験を持つ専門家を抱え、ESGの観点でも出資先企業のモニタリングを絶えず行っています。
植物性素材による持続可能な社会実現を目指す当社グループは、本出資を、世界が抱える食の課題解決と当社グループ独自の幅広い技術をつなぐ取り組みとして位置づけ、ファンド運営社およびファンド出資先である世界各国のフードテック企業との継続的なコミュニケーションを通じて、より幅広い代替タンパク事業領域への参画を進めるとともに、マーケットイン発想のもと消費者ニーズ起点での事業構築を推進します。
2023年度は、Unovis Asset Management B.V.の経営幹部が不二製油グループ本社に来訪され、世界のフードテックの最先端情報や出資先企業の現状をご報告いただき、共創可能な個別案件について協業して取り組んでいくことを確認しました。
Unovis Asset Management B.V.の経営幹部来社時の様子
持続可能な社会の実現に向けた企業間連携
一般社団法人Plant Based Lifestyle Lab(P-LAB)※の発足メンバーとして、分野の垣根を超えて集まった企業と連携し、PBFの認知向上と普及促進に取り組んでいます。
2023年度も淡路島で開催された「ワールドシェフ王サミット」に参画し(2023年11月11日~13日開催、P-LAB特別協賛)、会員企業協働で提供したPBFメニューに来場者から高い関心が寄せられました。
また前年度に引き続き、P-LAB全体交流会を開催しました(2023年9月11日、2024年3月27日)。9月には、海外PBF市況に関する講演や国内PBF普及に関するグループワークを実施、3月には、毎年定点的に行っている一般消費者を対象としたPBFの認知・浸透に関する実態調査について、内容と結果が報告されました。そのほか、恒例となっている会員企業のPBF商品紹介・試食会も行われ、会員企業間の交流を深めることができました。
今後もPBFに関する発信基盤として活動を活発化させるとともに、会員協働による新商品やメニュー開発などPBFによる価値創造を推進していきます。
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※ 2021年3月15社で発足、同年10月一般社団法人化。会員53社(2024年3月現在)。
ワールドシェフ王サミットへのP-LAB出展
P-LAB全体交流会でのグループワークの様子
ブルキナファソにおける栄養改善および女性の収入向上のための大豆商品サプライチェーン構築とビジネス調査
フジ オイル ガーナでは、原料のシアカーネルの多くを隣国のブルキナファソから調達しています。この地域でシアカーネルを収穫している女性たちの多くは大豆栽培にも従事しています。そこで当社グループは、ブルキナファソにおける大豆の調達および「大豆ミート」の開発・製造・販売を通して現地の消費者の栄養改善と農家の収入向上を目指すために、2019年から事業化可能性調査を行ってきました。本調査は、国際協力機構(JICA)の「2018年途上国の課題解決型ビジネス(SDGsビジネス)調査」※に採択され、本枠組みの中で、SDGsターゲットへの貢献可能性についても検討を進めました。
2023年度は、栄養状態の調査や、製品と価格の受容性に関する調査を行いました。女性農家の収入向上の可能性や、製品への一定の需要は確認できたものの、収益化までに時間を要する点や現地における治安・投資環境の変化などを踏まえ、事業化は見送りました。
本調査で得たマーケット環境やパートナー企業、大豆サプライチェーン環境などの情報は、今後同エリアでの事業を中長期的に検討する上で重要な知見となりました。
- ※ 国際協力機構(JICA)「途上国の課題解決型ビジネス(SDGsビジネス)調査」:開発途上国において持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献するビジネスを計画している本邦法人の提案に対して、調査費用1件5,000万円を上限として最大3年間の期間でJICAが支援を行い、事業計画の策定を行うもの。