パーム油のサステナブル調達
マテリアリティ
サステナブル調達
方針
不二製油グループは、2016年3月に「責任あるパーム油調達方針」を策定しました。本方針では、当社グループのサプライチェーンにおける全てのパーム油生産における「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ(NDPE)」を掲げました。人々と地球環境を尊重するサプライヤーからの、責任ある方法で生産されたパーム油の調達を進めています。
ガバナンス
当社グループは、取締役会の諮問機関であり代表取締役社長 兼 CEOが委員長を務めるサステナビリティ委員会※1にて、ESGマテリアリティ※2「サステナブル調達」について、マルチステークホルダーの視点で審議・監督し、取締役会へ答申しています。また、最高経営戦略責任者(CSO)管掌のもと、同重点項目「パーム油のサステナブル調達」の取り組みを推進しています。
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※1 ガバナンス、戦略および指標と目標、リスク管理>ガバナンス
https://www.fujioilholdings.com/sustainability/sustainability_management/
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※2 ガバナンス、戦略および指標と目標、リスク管理>戦略および指標と目標
https://www.fujioilholdings.com/sustainability/sustainability_management/
戦略GRI:2-6
パーム油は、東南アジアなどの熱帯地域に植生するアブラヤシから取れる油です。当社グループは、主にマレーシアとインドネシア産のパーム油を調達し、主原料の一つとして植物性油脂事業などで使用しています。パーム油は、ほかの植物性油脂と比べて加工しやすく単位面積当たりの収穫量が大きいため、食品から化学品まで幅広く使われており、世界の植物性油脂原料の中で最大の生産量となっています。その一方で、農園開発に起因する森林破壊や、強制労働・児童労働などの人権侵害が懸念されています。
当社グループは「責任あるパーム油調達方針」のもと、中長期的な目標を掲げてさまざまな問題の改善に取り組んでいます。このコミットメントは、当社グループの事業だけでなく、パーム油のサプライチェーン全体に適用されます。当社グループは、コミットメントを実現することで、環境的・社会的責任を果たし、これにより企業評価を高め、より大きな事業機会の創出につなげていきます。
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※1 ミルリスト(2023年7月~12月)(英語)
https://www.fujioilholdings.com/pdf/en/sustainability/supplychain_database/h2_2023_mill_list.pdf
- 最新のミルリストはサプライチェーンデータベース(英語)をご参照ください。
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※2 2023年12月時点
リスク管理
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サステナブル調達マネジメント>リスク管理
トレーサビリティ
持続可能で責任ある最良の管理を実践していくことは極めて重要です。購入する原材料が、責任ある方法で生産されていることを確認するために、当社グループのパーム油サプライチェーンのトレーサビリティを半年に1度収集・検証しています。これは戦略的な事業目標のためだけでなく、社会的責任でもあります。
サステナブル調達を行うことで、ステークホルダーの期待に応え、サプライチェーンのリスクを低減し、顧客やサプライヤーなどのステークホルダーとの長期的なパートナーシップを確保することができます。また、安全で健康的な食品の提供を通じて、持続可能な社会の発展に貢献するという当社グループの使命にも合致しています。
2023年12月時点で、搾油工場までのトレーサビリティ(TTM※1)100%、農園までのトレーサビリティ(TTP※2)95%を達成しました。
- ※1 TTM:Traceability To Mill
- ※2 TTP:Traceability To Plantation
マレーシア政府機関との年次対話の様子(TTPデータ共有の透明性向上について)
衛星写真によるモニタリング(対象地域/スコープ:インドネシア、マレーシア、パプアニューギニア)
当社グループは、2020年度から衛星通信会社のEarthqualizerと連携し、衛星技術を活用してグループのサプライチェーンにおける森林破壊リスクの特定・モニタリング・検証を行っています。農園などの衛星画像は、森林破壊の特定や緩和、防止に非常に有効です。同社から月に2回受領する報告書をもとに、当社グループのグリーバンスメカニズムを通して提出された森林破壊に関する全ての申し立てについて、調査に着手できるよう管理しています。
グリーバンスメカニズムによる申し立てが当社グループのサプライチェーンに関連するかどうかを特定する際には、トレーサビリティデータが不可欠です。トレーサビリティデータと衛星画像の照合の結果、関連性があると判断された場合、直接サプライヤーとともにさらに調査を進めます。当社グループのサプライチェーンにおける森林破壊の事例に対応するため、Earthqualizerと緊密に連携し、グリーバンスの処理、サプライヤーとの解決策の確立、NGOやそのほかのステークホルダーとのコミュニケーションなどを行っています。少なくとも四半期に1回、調査結果をグリーバンスリストに反映し、情報を更新しています※。
サプライチェーン変革プログラム(対象地域/スコープ:マレーシア)
パルマジュ エディブル オイル(マレーシア)では、NPOのEarthworm Foundationと提携し、労働環境改善プログラム(Labor Transformation Program:LTP)を2017年に開始しました。同社の全サプライヤーに対して、人権関連問題への対応をマンツーマンで支援しています。本プログラムを同社の直接サプライヤーに導入し、現在は全ての間接サプライヤーにも拡大しています。本プログラムのスコープは以下の8点です。
- 移動の自由
- 雇用契約
- 倫理的雇用
- グリーバンスマネジメント(グリーバンスメカニズムを通じて)
- 賃金および労働時間
- 結社の自由
- 安全衛生
- 労働者の住居ならびに宿舎
プログラムを通じたサプライヤー経営陣へのインタビュー
本プログラムでは、サプライヤーの事業や供給拠点における人権リスクを低減するために、サプライヤーに以下の支援を行っています。
- サプライヤーがコンプライアンスを遵守するための情報や支援文書の提供
- 専任のスタッフや部署に対する実践的な研修の実施
- 業界の要求事項に対するサプライヤーの意識啓発
- サプライヤーの労務管理への国際基準適用の支援
- サプライヤーにおける認証または顧客要求への対応支援
エンゲージメントのインパクトと効果を最大化させるために、これらの活動は通常現地の工場や農園の管理者と対面式で個別に実施されています。新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、本プログラムがオンラインによって実施されていたこともありましたが、2022年にはサプライヤーへの訪問を再開し、対面式での活動に戻りました。2024年3月時点で、同社のサプライヤーの74%に本プログラムを適用しています。
本プログラムにより、同社のサプライヤーにとって、より良い管理システムを構築・改善できるよう支援することで、労務管理を改善し、ステークホルダーから指摘された労働関連問題に対処できるようになりました。当社グループは、ステークホルダーにとって喫緊の課題である「搾取ゼロ」の達成に向けて、サプライチェーン全体での100%導入を目標に、取り組みを進めていきます。
自己評価ツール(対象地域/スコープ:当社グループのパーム油サプライチェーン)
サプライヤーによる自己評価は、NPOのEarthworm Foundation協力のもと、当社グループがパルマジュ エディブル オイル(マレーシア)のサプライヤーに働きかけて実施しています。本ツールでは、サプライヤーの自己評価により、サプライヤーの現況やサステナビリティ関連の実績を把握し、モニタリングすることが可能です。サプライチェーンのデュー・ディリジェンス・プロセスにおいて重要なツールであり、本ツールを活用することで、より広範かつ効率的にサプライヤーに働きかけることができます。
2023年度の進捗は以下のとおりです。
2023年度 自己評価質問票と行動計画の提出状況
パルマジュ エディブル オイル(マレーシア)
- 直接サプライヤー:提出率100%
- 間接サプライヤー:提出率76%
- プランテーション:5プランテーションから提出
本取り組みにより、サプライヤーが当社グループの方針に沿って事業を改善できるよう、サプライヤーに対し提案や支援を行います。また、サプライヤーが自社の持続可能な取り組みを発信できるようになり、当社グループの「責任あるパーム油調達方針」の要求事項をどの程度満たしているかを報告することもできるようになりました。
今後は、サプライチェーンのNDPE進捗状況を報告することで、デュー・ディリジェンス体制を強化していきます。
森林破壊ゼロに向けたエンゲージメント(対象地域/スコープ:当社グループのパーム油サプライチェーン)
当社グループは、森林破壊ゼロを実現するための最善のアプローチを模索するために、サプライヤーと継続的に関わりを持っています。
現在、以下のアプローチを行っています。
- 農園までのトレーサビリティ(TTP)の向上のため、既存のサプライヤーとの連携を継続
- TTPデータと衛星データを重ね合わせることにより、第三者衛星会社によって、当社グループの供給域内で森林破壊が行われていないことを検証
- TTPデータの取得方法について直接サプライヤーを支援
- 潜在的な森林破壊のリスクをサプライヤーに報告し、対策を要求・モニタリング
当社グループは、森林破壊ゼロへの取り組みに消極的なサプライヤーや、取り組みの進捗が不十分なサプライヤーを排除しつつ、森林破壊ゼロに向けて対応を行っています。今後も本コミットメントを達成できるよう管理・維持していきます。
グリーバンス(苦情処理)メカニズム(対象地域/スコープ:当社グループのパーム油サプライチェーン)GRI:2-25, 26
「責任あるパーム油調達方針」の透明性と有効性を高めるために、2018年5月にグリーバンスメカニズム※を設置しました。グリーバンスメカニズムでは、ステークホルダーが当社グループやグループのサプライチェーン上の環境・人権問題などの懸念について提起することができます。これにより、ステークホルダーを効果的に巻き込み、当社グループの「責任あるパーム油調達方針」に基づいて適切な是正措置を講じることができます。
不二製油グループ本社のウェブサイトに掲載されているグリーバンスリストを通じて、四半期ごとに受付された全てのグリーバンスとその進捗状況を報告しています。2023年度に登録したグリーバンスは42件(環境関連39件、社会関連3件)です。そのうち解決済み12件、モニタリング中12件、購入がない件数が18件となります。
2021年度からはグリーバンスリストの四半期ごとの更新に加え、特定の顧客やステークホルダーに対し、月次のグリーバンスレポートの発行を開始しました。これらの報告書では、グリーバンス事例の中でも特に注目度が高いと思われるものに関して、最新の進捗状況をお伝えしています。
グリーバンスメカニズムは専門家の協力を得ながら定期的に見直しを図り、全てのステークホルダーの懸念に対処するために必要かつ重要な情報の把握に努めています。
こうした取り組みが「責任あるパーム油調達方針」に反する疑いのある事象を公正、公平かつ透明性を持って解決していくことにつながると確信しています。
APTランドスケープイニシアチブGRI:304-3
インドネシア:アチェ・ランドスケープイニシアチブ(対象地域/スコープ:(インドネシア)アチェ州)
当社グループは、インドネシアにおける森林破壊に対処し、農作物調達に関わる生産・自然保護・社会的・労働的な適正慣行のバランスを保つことの実現可能性を示すため、2018年からインドネシアのアチェ地域におけるランドスケープイニシアチブを支援しています。インドネシアは当社グループのサプライチェーンにとって重要な調達先であり、Earthworm Foundationと協力し、継続的に取り組んでいます。
インドネシアのスマトラ島は、世界でも最も貴重な熱帯雨林の一つであるルセルエコシステムをはじめ、自然生態系の観点で重要な地域です。しかし、パーム農園開発などにより森林破壊のリスクにさらされています。当社グループは、こうしたリスクを低減・是正するために、「APT(Areal Prioritas Transformasi)ランドスケープイニシアチブ※」に参画しています。本プログラムは、政府、小規模農家や地域コミュニティ、パーム油サプライチェーン、企業、NGO、さらにテーマ別の専門家などが連携し、パーム農園だけでなく地域全体で改善を図る仕組みです。2021年にはこのプログラムの範囲を、インドネシア最北端のアチェ州の約70%を占める約390万haの広大な地域に拡大しました。この地域は、ルセルエコシステムを中心に12の県にまたがっています。
2023年の活動は以下のとおりです。
- Subulussalam、Aceh Singkil、Aceh Selatanの地区政府当局との協業を実現し、持続可能なパーム油生産と環境管理のための共同行動計画を策定
- 農園内外で合計22,704haの森林を保護
- 24,958haの森林保護エリアを特定
- 1,270haの森林を管理するためのインセンティブを提供することで、地元の生産者とパームセクターの川下企業との協力関係を促進
ランドスケープ実施地域
マレーシア:サザン・セントラル・フォレスト・スパイン(SCFS)ランドスケープ(対象地域/スコープ:(マレーシア)SCFS)
当社グループは2022年から、半島マレーシアに位置する当社グループの主要なパーム油調達地域のサザン・セントラル・フォレスト・スパイン(SCFS)においても、ランドスケープイニシアチブに参画しています。SCFSランドスケープ※1におけるパーム油サプライチェーンは相互に関連しており、中間業であるFFBディーラー※2との協働による農園までのトレーサビリティ(TTP)100%の達成、労働慣行の改善、パーム油農園周辺での人間と野生動物の共存など、ランドスケープ内の複数のステークホルダーと連携して取り組みを進めることが重要です。
2023年度の進捗は以下のとおりです。
TTP100%の達成/パーム油農園周辺での人間と野生動物の共存
主要な搾油工場と協力し、トレーサビリティ・ワークショップを通じて、40名以上のディーラーに対し不足しているデータを補うなどのトレーニングを実施しました。また、セクター別の課題に取り組むため、ランドスケープ・チームは精製所パートナーやマレーシアパーム油庁(MPOB)、マレーシアパーム油認証評議会(MSPO)と画期的な対話を開始し、統合された共通のトレーサビリティ・システムの方法を探り、トレーサビリティデータ収集のための単一プラットフォームを構築しました。さらに小規模農家のコミュニティや農園と協力し、課題に対して実用的な解決策を開発、テストしています。活動の一例としては、森林保護と復元を目的に取り組んでいる人間と象の共存プログラムにおいて、日中と夜間の象の動きを監視するためのドローンを使ったトレーニングや、象がフェンスに近づいた時に携帯電話に信号を送る早期警告システムの設計などに取り組んでいます。その結果、人間と象の共存プログラムの対象面積は8,433haとなり、当初の目標の約5倍に拡大しました。また、ランドスケープ・チームは新たに5つの村に進出し、より良い経営慣行、持続可能なパーム油のマレーシア基準(MSPO)の遵守、収入の多様化に焦点を当てたキャパシティビルディングなどのセッションを行い、200名近くの農家が参加しました。
労働慣行の改善
マレーシアの人的資源省およびプランテーション商品省との共同イニシアチブ「ゲット・イット・ライト」は、企業に対して労働基準改善のためのガイダンスを整備しました。労働慣行課題において重要な2つの政府機関が連携したことでサプライヤーに対するメッセージが強化され、労働基準の強化を促すことができました。
同時に、精製所との協力により、トライアルとして参加している搾油工場向けのグリーバンスメカニズムが改善されたことで、責任ある事業慣行の重要な要素が強化されました。
- ※1 https://www.earthworm.org/our-work/projects/scfs-malaysia
- ※2 FFBディーラー:小規模農家と搾油工場に介在し、小規模農家の土地管理サポートや搾油工場へパーム果房(FFB:Fresh Fruits Bunches)の販売をする中間業者。
マレーシア人的資源省、プランテーション商品省との共同イニシアチブ「ゲット・イット・ライト」
指標と目標
〇:目標に対して90%以上達成、△:目標に対して60%以上達成、×:60%未満
中長期目標 | KPI | 2023年度目標 | 2023年度実績 | 自己評価 | |
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2030年 | 2025年 | ||||
森林破壊ゼロ、 泥炭地開発ゼロ、 搾取ゼロ |
搾油工場までのトレーサビリティ(TTM):100% | TTM:100% | TTM:100% | TTM:100% | 〇 |
農園までのトレーサビリティ(TTP):100% | TTP:85% | TTP:85% | TTP:95% | 〇 | |
N/A | N/A | パーム油サプライチェーンにおける森林破壊を特定、監視、検証、排除するため、衛星画像を用いた常時モニタリングの継続 | 衛星画像を用いた常時モニタリングを継続 | 〇 | |
労働環境改善プログラム適用率:100% (全直接サプライヤー) |
労働環境改善プログラム適用率:100% (パルマジュ エディブル オイル(マレーシア)※の全サプライヤー) |
パルマジュ エディブル オイル (マレーシア)のサプライヤーへの労働環境改善プログラムの適用率:70% | パルマジュ エディブル オイル(マレーシア)のサプライヤーへの労働環境改善プログラム適用率:74% | 〇 |
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※ 不⼆製油グループ本社の100%子会社の油脂製造拠点。
考察
トレーサビリティを確保することにより、調達するパーム油の産地や精製所を知ることができます。近年、多くのパーム油消費国を含む世界中で、環境や人権に関する規制や報告義務が強化されています。これにより、トレーサビリティ情報やサステナビリティの進捗状況だけでなく、グリーバンスへの対応の進捗状況など、そのほかの情報でも透明性の高い報告が行われるようになりました。またステークホルダーにとっては、サプライチェーンのデータを入手することで、企業とサプライヤーとの関与度合いを把握することが容易になりました。当社グループは2030年までにTTM100%を達成することを目標に掲げていますが、既に2019年にTTM100%を達成しており、2023年度も維持しています。
さらに、全サプライチェーンにおいて農園までのトレーサビリティを確保するための手順も整えました。TTP100%を達成するためには、情報の機密性やFFBディーラーからの調達を含めたサプライチェーンの複雑さなど、さまざまな課題がありますが、複数の専門家やコンサルタントと協力し、当社グループのTTPパフォーマンスを向上させるための戦略を強化しています。
労働環境改善プログラム(LTP)については、新型コロナウイルス(COVID-19)により一時停止していた出張訪問ができるようになり、サプライヤーへの直接の訪問や面談を再開した結果、実施状況は目標を上回りました。今後はサプライチェーン変革プログラムに名称を変更して労働環境以外の改善も含めた広い取り組みを行っていきます。
パーム油生産量全体の約30~40%を占める小規模農家については、持続可能な農法技術や環境への配慮に関する十分な情報や、持続可能な手法を実現するための資金を持ち合わせていないことが課題です。森林伐採、土地の権利、生産労働者の権利など、取り組むべき問題はまだ多く残っています。グループとして調達戦略の強化とサプライチェーン慣行の改善に取り組みながら、こうした問題に対する機運と認識を高めていくことが重要です。
Next Step
パーム油の持続可能な調達を実現するためには、NDPE(森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ)に向けて、取り組みを継続することが重要です。そのために、2023年度に引き続き、以下の2024年度目標に取り組んでいきます。
- TTM:100%
- TTP:85%
- パーム油のサプライチェーンにおける森林破壊を特定、監視、検証、排除するための、衛星写真による常時モニタリングの継続
- パルマジュ エディブル オイル(マレーシア)のサプライヤーへのサプライチェーン変革プログラムの適用:80%
具体的な取り組み
認証油の拡大(対象地域/スコープ:当社グループのパーム油サプライチェーン)
2022年に、当社グループが調達するパーム油のうちRSPO※1認証油が占める割合は約58%になり、前年比で17ポイント増加しました。2023年には、数量は引き続き増加し、2ポイント増加の60%(MB:20%、SG/IP:40%)となりました。持続可能なパーム油への需要の高まりが、当社グループの認証油の調達量の増加傾向に大きく寄与しています。マレーシアのアブラヤシ栽培会社であるUnited Plantations Berhad(ユナイテッドプランテーション社)との合弁会社であるユニフジ(マレーシア)の生産能力を維持することで、市場の拡大に対応するための十分なパーム油供給量を確保することができました。
RSPO認証は、パーム油業界で広く認知されている国際的な認証制度です。当社グループは、パーム油の持続可能な生産と消費の認証制度の構築に賛同し、2004年からRSPOに加盟しています。RSPOはパーム油業界の7つのセクターの利害関係者を束ねるNPOで、持続可能なパーム油のグローバルな基準を策定し実施しています。これらの基準には、認証パーム油を生産するために加盟企業が遵守しなければならない一連の環境・社会基準が含まれています。これらの基準が適切に適用されれば、パーム栽培がパーム油生産地域の環境やコミュニティに与える悪影響を最小限に抑えることができます。当社グループは、RSPOの新ルールである「責任の共有」を実践し、認証パーム油の取引を年々拡大してきました。しかし近年、認証パーム油の供給が需要を上回っていることや、小規模農家による認証取得が困難であることなどの課題を確認しています。そこで、2021年からRSPOのワーキンググループに積極的に参加してこれらの課題に対する解決策を議論し、開発に反映しています。
今後はパルマジュ エディブル オイル(マレーシア)の戦略的サプライヤーであるマレーシアのJohor Plantations Group Berhad(ジョホール プランテーションズ グループ社)との協業※2を深め、特に需要が高まっている欧州においてより多くの顧客の要望に応えるため、一層取り組みを進めていきます※3。
- ※1 Roundtable on Sustainable Palm Oil。持続可能なパーム油のための円卓会議。
※2 https://www.fujioilholdings.com/pdf/news/2024/240125_01.pdf
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※3 RSPO進捗状況
NGO・業界との協働GRI:304-3
①マレーシア・サバ州での小規模農家支援活動
当社グループは、マレーシアの社会的企業Wild AsiaのWild Asia Group Scheme(WAGS)に2016年1月から参画し、サバ州(マレーシア東部)での認証プロジェクトとWAGS BIO(環境再生型農業)プロジェクトを支援しています。WAGSは農法の改善および国際的基準への準拠を支援することで、パーム油の小規模農家が直面する課題解決に取り組んでいます。
認証プロジェクトでは、小規模農家にRSPO認証取得のためのトレーニングを提供しています。2023年11月に実施されたRSPO監査では、新たに350軒のWAGS参画農家が認証を取得しました。2016年1月の参画以降、当社グループがWAGSを通して認証取得を支援した小規模農家の累計は1,263軒にのぼります(2024年3月時点)。
WAGS BIOプロジェクトでは、小規模農家の所得向上、生物多様性への負の影響の緩和や、農園周辺の自然生態系の保全・回復を目的に、環境再生型農業の実践トレーニングを実施しています。2023年度も引き続き、環境再生型農法や生姜などの換金作物の間作に関するトレーニングを支援しました。無農薬栽培などによりBIOファーム基準を満たす農園は計96区画に達しました(2024年3月時点)。また、新たにアブラヤシの葉からバイオ炭を製造するトレーニングを、農家に実施しました。バイオ炭を施用することで土壌の質が向上し、土壌に蓄積される炭素が気候変動の緩和効果をもたらすことが期待されます。
WAGS BIO農家での生姜の間作のための
農園整備支援
バイオ炭の施用
②The Consumer Goods Forum Japan Sustainability Local Group パーム油ワーキンググループ
当社グループは、消費財の国際的な業界団体であるThe Consumer Goods Forum(TCGF)のJapan Sustainability Local Groupの一つである「パーム油ワーキンググループ」に、2017年度の設立当初から参画しています。
③Japan Sustainable Palm Oil Network
不二製油グループ本社は、持続可能なパーム油の調達と消費を日本の産業界全体に促す趣旨に賛同し、2019年10月よりJapan Sustainable Palm Oil Networkに正会員として加盟しています。
④Palm Oil Collaboration Group
不二製油グループ本社は、NDPEへの実効性のある行動を加速することを目的としたパーム油サプライチェーンに関わる企業団体であるPalm Oil Collaboration Group(POCG)※に2020年6月から参画し、人権問題について協議・解決するための「社会課題ワーキンググループ」のメンバーとして活動しています。今後優先する取り組みとして下記が挙げられます。
- マネジメントシステムにおける人権デュー・ディリジェンス
- 外国人労働者が多く占めるマレーシアのパーム油産業における責任ある採用活動
- 先住民および地域コミュニティの権利
今後もワーキンググループに参加・貢献し、NDPE達成に向けた効果的なソリューションの開発を目指します。