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高齢者の心身の健康課題の解消

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事業活動との関わり

超高齢社会の先頭を走る日本では、医療費の増大などによって引き起こされる社会保障制度の崩壊が危惧されています。この課題を解決するためには、健康寿命を延伸し、高齢者が生きがいをもってより良く生き続けられる社会を構築することが必要です。不二製油グループでは植物性油脂・タンパクを中心とした健康に資する食素材を提供することで、高齢者の心身にまつわる健康課題の解消に寄与し、高齢化社会におけるウェルビーイングの実現を目指します。

考え方

不二製油グループは油脂・大豆などの植物性食品素材による健康機能に関する研究を長年にわたり推進しています。特に、研究成果として製品化している安定化DHA・EPA※1や大豆ペプチド※2は、高齢者の健康課題(認知症、メンタルヘルス、生活習慣病、フレイル※3など)の解消に寄与する食素材として期待されています。これらの食素材を顧客ならびにその先の消費者へ提供するとともに、自治体などとの外部連携により予防する仕組み(エコシステム)を構築することで、事業を通じた高齢者の心身の健康維持に貢献します。

  • ※1 ドコサヘキサエン酸・エイコサペンタエン酸の略称。体内での合成効率が低いために、食物から摂取することを推奨される脂肪酸の一つで、記憶力・集中力の維持、中性脂肪低下など、さまざまな健康効果があることが報告されている。
  • ※2 ペプチドとは、タンパク質の分解過程でできる物質のこと。大豆のタンパク質を酵素分解することで生成されるペプチドは、大豆ペプチドと呼ばれる。
  • ※3 虚弱ともいう。健康な状態と要介護状態の中間に位置し、加齢とともに身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のこと。

推進体制

最高技術責任者(CTO)の管掌のもとで取り組みを推進しています。また、ESGマテリアリティ※1の一つとして、取締役会の諮問機関であるサステナビリティ委員会※2において進捗や成果を確認しています。

目標・実績

〇:目標に対して90%以上達成、△:目標に対して60%以上達成、×:60%未満

2022年度目標 2022年度実績 自己評価
安定化DHA・EPAの健康機能面における差別化・優位性の確立
  • 安定化DHA・EPAの単回摂取で血中DHA濃度の有意な上昇を確認
  • 安定化DHA・EPAの1ヵ月摂取にて、生体内代謝物での有益な変化を確認
認知症予防に向けたエコシステムの構築
  • 2~3自治体へのアプローチ実施。認知症予防の重要性は理解いただく一方、一企業との連携は公共性面で課題があるとして実施に至らず
  • 自治体連携を目指した計画書案を作成し、今後、産学連携に自治体を巻き込んだ形のケーススタディとしての実施を模索予定

考察

認知症予防への効果が期待される安定化DHA・EPAを含む乳飲料を用いて、摂取したDHA・EPAの吸収が生体指標にどのように反映されるのかを研究しました。プラセボ群に比べて、血中のDHA濃度は摂取後、速やかに上昇することが確認できました。また、1ヵ月の連続摂取で複数の有益な代謝マーカー(アルツハイマー病患者で増加する代謝物Xの減少、血管の拡張に関与する代謝物Yの増加など。これらは知財・論文化の予定)の変動を捉えました。
認知症予防エコシステムは、複数の地方自治体に認知症予防プログラムによる取り組みを紹介し、協業の可能性を探りました。認知症予防の重要性は理解されるものの、①具体的なプロトコルが必要、②地方自治体として一企業との連携が困難、など種々の課題があることが分かりました。安定化DHA・EPA含有食品の有効性に興味を示す医療機関との連携は引き続き模索していきます。認知症の見える化(ヘルステック)開発では、産学連携にて新たな認知症状の「見える化」を計画していく予定です。加えて、この産学連携での「見える化」研究を礎に、自治体での認知症予防の概念実証につなげる可能性を探っていきます。

  • ※ AIやIoTを活用したセンシング技術、ウェアラブルデバイスなどのデジタル技術を組み合わせて健康管理、予防、介護などの課題解決を図る技術群のこと。

Next Step

提供する食素材の健康機能に関するエビデンスおよび優位性の確立、高齢者が予防を意識するモチベーションの創出が重要です。これらの課題を念頭に置き、以下の2023年度目標に取り組みます。

  • 安定化DHA・EPAの健康機能面における差別化・優位性の確立

具体的な取り組み

安定化DHA乳飲料摂取による血中変化を捉える

2022年度は、コロナ禍で実施が遅れていた国立大学法人島根大学医学部および社会医療法人加藤病院(島根県川本町)との共同研究を進めました。今回は、グループ会社のオーム乳業(株)と共同開発の、高抗酸化性を付与したDHA 297mgを含む乳飲料を約1ヵ月間、複数の高齢者に摂取いただきました。DHA乳飲料を摂取することで、速やかに血中にDHAが検出され、また1ヵ月摂取することで、血中の健康機能マーカーに有益な変化が認められています。結果についてはより詳細な解析を実施しますが、健康機能素材摂取の判断となる正しい情報として提供するのに適切なものです。日本において健康機能、とりわけ認知機能を謳う機能性油脂の一般食品での市場は、今後に大きく拡大する可能性が高いと想定します。2022年度の新規採用実績は1件にとどまりましたが、消費者の皆様にこれまで以上に手軽においしいDHA配合食品を摂取していただくために、持続的に新商品を市場に出していくことが重要と考えます。