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カカオのサステナブル調達

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サステナブル調達

マネジメント情報

事業活動との関わり

不二製油グループの業務用チョコレート事業では、主原料として、カカオ豆・ココアリカー※1・ココアバター※2・ココアパウダー※3などのカカオ原料を購入し、チョコレート製品を製造しています。カカオの二大生産国であるコートジボワールとガーナでは、小規模農家が生産者の大半を占めており、貧困やそれに起因する子どもの教育や児童労働、低い農業生産性、森林破壊や気候変動の影響など複雑で相互に関連する社会問題が生じています。これらの問題を改善するには、枯渇した土壌の改善、女性のエンパワーメント、子どもの教育へのアクセス確保ならびに総合的な保護、さらに森林再生への取り組みなど多面的なアプローチが必要です。人権を尊重し、自然資源を保全し、農家を貧困から救うカカオサプライチェーンを構築し、現在および将来のカカオ供給の可能性を確保することが当社グループの役割と責任であると認識しています。

  • ※1 カカオ豆から外皮を取り除いて磨砕してできるペースト状のもの。
  • ※2 カカオ豆を搾油して得られる植物油脂。
  • ※3 カカオ豆からココアバターを搾油した後のものを粉砕し粉末状にしたもの。

考え方

不二製油グループは、2018年8月に「責任あるカカオ豆調達方針」を策定し、2020年には持続可能なカカオ豆調達の実現と進捗を把握するための中長期目標とKPIを設定しました。農家の所得向上や児童労働撤廃、森林再生、サプライチェーンの透明性およびトレーサビリティの向上に取り組みます。

推進体制

最高経営戦略責任者(CSO)が管掌しています。また、ESGマテリアリティ※1の一つとして、取締役会の諮問機関であるサステナビリティ委員会※2において進捗や成果を確認しています。

目標・実績

〇:目標に対して90%以上達成、△:目標に対して60%以上達成、×:60%未満

中長期目標 KPI 2022年度目標 2022年度実績 自己評価
2030年 2025年
森林再生と森林保護 植樹100万本※1 植樹50万本 100万本植樹活動継続のためのパートナーの選定
  • パートナー選定完了
  • 植樹6万本(ガーナ)
直接調達農家のうち、90%の農家のGPSマッピング完了と、トレーサビリティの向上 不二製油グループのカカオ豆直接調達農家の89%についてGPSマッピングを実施(コートジボワール、ガーナ、エクアドル)
直接調達農家におけるGAP※3トレーニングおよび/またはコーチングの提供 GAPトレーニングプログラムに30,846名の農家が参加(コートジボワール、ガーナ、エクアドル)
児童労働撤廃 児童労働撤廃 最悪の形態の児童労働※2ゼロ 不二製油グループのカカオ豆直接調達農家100%にCLMRS(Child Labour Monitoring & Remediation System:児童労働監視改善システム)を構築 不二製油グループのカカオ豆直接調達農家100%にCLMRSを導入
当社グループのサプライチェーンに属する女性のエンパワーメント支援のための包括的なコミュニティ開発活動の実施
  • 161コミュニティの計674の村で貯蓄貸付組合(VSLA)が活動
  • 19,353名の組合員のうち84%(16,257名)が女性(コートジボワール、ガーナ)
  • ※1 多種多様な緑陰樹の苗木を2021年から2030年までの10年間で100万本植樹予定。
  • ※2 最悪の形態の児童労働:Worst Forms of Child Labour(WFCL)。ILO(国際労働機関)第182号条約「最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約」により、子どもの安全、健康、道徳を害するおそれのある危険有害労働を禁止している。人身取引、債務労働、強制労働、児童買春、および児童ポルノ、犯罪など不正な活動、武力紛争での子どもの使用が含まれる。
  • ※3 GAP:Good Agricultural Practices(農業生産工程管理)。

考察

2018年8月に策定した「責任あるカカオ豆の調達方針」を実現するために、2020年6月にKPIを設定し、今後10年間の取り組みの方向性を決定しました。これには2019年にブラマー チョコレート カンパニー(米国)が不二製油グループの一員となり、カカオのサステナブル調達に大きな役割を果たしています。
2022年度は多種多様な緑陰樹6万本の植樹を実施しました。カカオの苗木を合わせると植樹本数は10万を超えます。2023年以降の植樹に関するパートナー選定も完了し、植樹本数の目標達成に向け活動を継続します。
また、女性のエンパワーメントでは開発活動を支援する顧客の協力のもと、大幅に目標を超える結果となりました。
今後も、顧客、サプライヤー、認証機関、国際機関などと緊密に連携し、グループの調達方針に沿ったプログラムやイニシアチブを展開していきます。

Next Step

農家の所得向上、子どもの保護、カカオ農家への教育機会の提供、女性の地位向上、森林の保護・再生などが重要です。これらの課題に取り組むため、2023年度には以下の目標に取り組んでいきます。

  • 直接調達とトレーサビリティシステムの改善に向け、農家の90%のGPSマッピングの完了
  • 当社グループの直接調達サプライチェーン上の農家コミュニティで、児童労働監視・是正システム(CLMRS)の導入継続
  • 当社グループの直接調達サプライチェーン上の173のコミュニティにおいて女性のエンパワーメント支援の実施(コートジボワール、ガーナ、エクアドル)
  • 当社グループの直接調達サプライチェーン農家におけるGAPトレーニングの継続
  • 当社グループの直接調達サプライチェーン上での植樹13万本実施(コートジボワール)
  • Satelligence提供のデータの活用によるサプライチェーン関連の森林破壊の評価ならびに14万ha以上の森林破壊リスクアセスメントの実施
  • ブラマー チョコレート カンパニー(米国)による、農園やその周辺での多種多様な緑陰樹の苗木約27万本の配布(コートジボワール、ガーナ)
  • ※ 「植樹による森林の保全と再生」をご参照ください。

具体的な取り組み

責任あるカカオ豆調達方針達成のための課題解決アプローチ

社会課題 課題解決アプローチ 対象地域
地球環境 農場や地域周辺での植樹による森林再生 ガーナ、コートジボワールが主対象
人権 CLMRS導入と児童への教育機会の提供 西アフリカ(ガーナ、コートジボワール)
地球環境と人権 コミュニティ開発プログラムの実施 西アフリカ(ガーナ、コートジボワール)

トレーサビリティ

カカオのサプライチェーンにおける社会・環境課題に対処するためには、サプライチェーン全体のトレーサビリティを向上させることが重要です。不二製油グループの直接調達農家のサプライチェーンでは、サプライヤーと協力して、調達先の農園の境界線(ポリゴン)をマッピングしています。ポリゴンマッピングと呼ばれるこのプロセスは、保護地域に対するコンプライアンスを確立するための基礎となります。また農園ポリゴンは、衛星画像を活用し、サプライチェーンに関連する森林破壊の評価に使用できます。
カカオ農家とその家族の状況を把握することは、子どもたちを保護し、児童労働を防止するためにも不可欠です。ブラマー チョコレート カンパニー(米国)は、直接調達農家のサプライチェーンの農家コミュニティの地図を、毎年ウェブサイトで開示しています
コートジボワールで活動する同社のサステナビリティチームは、プログラムの監督、実施、効果の確認、影響の評価において重要な役割を担っています。同社の供給農家グループは、製品認証機関または第三者監査機関による監査を毎年受けています。

CLMRSの導入と児童への教育機会の提供

不二製油グループは、カカオ産業における重要な人権問題として挙げられる児童労働の撤廃に向けて取り組んでいます。
カカオの主要生産国では、農家は絶対的貧困や児童労働、学校や保健所などの地域インフラの不足、作業者の不足、農業技術向上に投資する資本の不足などの課題があり、それぞれ適切な対処が必要です。当社グループは、児童労働を防止するための環境整備と、サプライチェーン上で児童の権利侵害を是正する仕組みづくりに注力しています。
児童労働の根本的な原因を特定し、潜在的な違反行為に対する意識を高めるため、西アフリカでカカオの直接調達サプライチェーンに関わる全ての村でコミュニティエージェントと農家が協力して児童労働監視・是正システム(CLMRS)を構築しています。監視と是正措置を行うコミュニティエージェントは、児童保護に関する研修を受け、定期的に世帯調査を実施しています。また、剪定作業指導などのカカオ農家の支援、VSLA※1による女性のエンパワーメントの促進、環境保全※2も児童労働の防止・改善に寄与しています。
また、カカオ産業のほかのステークホルダーと協力し、業界を挙げた取り組みも行っています。当社グループは2022年、コートジボワールでの児童労働を撲滅し、子どもたちに良質な生活と教育を提供することを目的とした児童学習・教育施設(CLEF※3)と早期学習・栄養施設(ELAN※4)の2つの業界イニシアチブに参加しました。

CLMRSの仕組み

カカオ農家の支援

不二製油グループは、コートジボワール(2004年開始)、ガーナ(2014年開始)、エクアドル(2013年開始)のカカオ農家を直接支援しています。既存の農業技術をベースにツールやトレーニングを提供し、農家がGAPや気候スマート農業を導入するよう働きかけています。GAPの中でも特に剪定は重要なため、コミュニティレベルで剪定を中心としたサービスグループを導入し、希望する農家に有償労働サービスを提供しています。害虫や病気、気候パターンの変化(特に雨量)など大きな課題はありますが、GAPの導入により、最終的には農地の回復力が向上すると期待しています。
プログラムに参加する農家やコミュニティは、対象のカカオに対してプレミアム(支援金)を受け取ります。このプレミアムは当社グループの社内基準や第三者基準を遵守し、トレーサブルでサステナブルなカカオ豆を供給するために必要な追加作業の対価としても支払われています。農家の収入向上にも直接貢献しています。また、プレミアムの一定割合は、教室や学校食堂、給水ポンプなどの建設や修復など、カカオ農家のコミュニティ全体に還元されています。

  • ※ カカオ栽培における気候変動の影響を緩和し、適応することを目的とした持続可能な農業アプローチ。カカオ栽培のレジリエンス向上、温室効果ガスの排出削減、持続可能な農法の推進に重点を置く。

コミュニティ開発と女性のエンパワーメント

不二製油グループでは、サステナブル調達の実現にはカカオ農家だけでなく、生産地を含む地域社会のニーズを満たすことが重要と考え、学校や保健所、産科病院、安全な水へのアクセスなど、カカオのコミュニティにおける社会インフラの整備を進めています。
カカオのコミュニティとその家庭における食糧安全保障、栄養、教育、健康へのアクセスを確保する上で、女性は非常に大きな役割を果たしています。ガーナとコートジボワールの地域開発プロジェクトでは、家庭やコミュニティにおける女性のエンパワーメントに注力し、女性の経済的機会の創出を図っています。この取り組みの一環として、女性向け識字教育コース提供とVSLA(貯蓄貸付組合)の設立があります。VSLAは、女性主体で預金貸付を行う相互扶助グループで、メンバーは既存または新規のマイクロビジネス投資、子どもの教育費、IGAの資金として利用し、能力開発に活用しています。同コンセプトの取り組みが広がりつつあります。

  • ※ IGA:収入向上活動(Income Generation Activity)。

植樹による森林の保全と再生

不二製油グループは、カーボンフットプリントの削減、森林破壊のないサプライチェーンの実現、そして生物多様性の保護に取り組んでいます。
カカオ農家とそのコミュニティの長期的な利益を確保するために、気候スマート農業の推進と生態系の回復に焦点を当てています。

政府および企業との連携

2017年から、ブラマー チョコレート カンパニー(米国)はCocoa and Forests Initiative(CFI)に参加しています。参加企業36社がコートジボワールとガーナの政府とともに、カカオのサプライチェーンにおける森林破壊をなくし、森林保護と回復を促進するために取り組んでいます。第1期(2018年~2022年)において、参加企業はアグロフォレストリーや森林の回復を目的に2,170万本のさまざまな種類の緑陰樹の苗木を配布しました。両国で、参加企業の直接サプライチェーンにおいて平均72%のトレーサビリティを達成し、大規模な農園ポリゴンマッピングを作成しました。このCFI第1期において、同社は990,987本のシェードツリーを配布し、84%のトレーサビリティを確保しました。当社の直接調達カカオサプライチェーン(コートジボワール、ガーナ)において、30,110ヘクタールのアグロフォレストリーを推進しました。2023年より、CFI第2期プログラムが開始されています。
また世界カカオ財団でもほかの参加企業と協業し、カカオの栽培におけるCO2排出削減のためのガイダンスを提供しています。このプロジェクトは2023年にはさらなる成果が期待されます。

Satelligence社との提携

2022年、不二製油グループは森林モニタリングの世界的リーダー企業であるSatelligence社と提携し、コートジボワール、ガーナ、エクアドルにおける森林破壊リスクの評価に取り組みました。衛星画像を活用し、カカオの樹冠の変化観察、カカオ農園とその周辺における排出CO2の増減や炭素隔離のモニタリング、森林減少リスクの評価、シェードカカオ地域の特定などを実施しました。
また、ブラマー チョコレート カンパニー(米国)では森林減少や森林劣化への対応として、リアルタイムのリスク警告システムも導入しています。Satelligence社の初期評価では、コートジボワール、ガーナ、エクアドル全域の約50,000km2をカバーしています。当社の直接調達カカオサプライチェーン(コートジボワール、ガーナ、エクアドル)において、144,095ヘクタールの森林減少リスクアセスメントを実施しました。Satelligence社が発行した、2001年から2021年までの土地被覆の変化と、FLRI(Forest Loss Risk Index :森林損失リスク指数)に関するレポートでは、同社のカカオサプライチェーンにおいて経年で明確な森林減少の傾向はありませんでした。同社のサプライチェーンにおいて、森林破壊が一貫して低い水準で推移していることは、森林破壊に対する継続的な取り組みの成果です。

AGRO-MAP社とのパートナーシップ

2022年、不二製油グループは、2030年コミットメントであるカカオ生産地での植樹100万本を達成するため、AGRO-MAP社とパートナーシップを結びました。このパートナーシップにより、2023年にコートジボワールの直接調達カカオサプライチェーンに13万本のさまざまな種類の緑陰樹の苗木・果樹を植樹します。このプロジェクトでは、カカオのアグロフォレストリーやコミュニティの森林再生を推進するとともに、IGAを通じてカカオ農家の所得の多様化を図ります。さらに、気候変動の影響を受ける生産者やコミュニティのレジリエンスを強化し、CO2の排出削減、生物多様性の保護に貢献します。

日本の取り組み(「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」への参画)

不二製油グループ本社は国際協力機構(JICA)が事務局を務める「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」に参画しています。不二製油(株)では、同プラットフォームが発表した「児童労働の撤廃に向けたセクター別アクション」に賛同を表明しています。

世界カカオ財団(WCF)への参画

不二製油グループは2012年2月より、世界カカオ財団※1へ加盟しています。世界カカオ財団は、農家が栄え、カカオ生産者コミュニティが活力を持ち、人権が尊重され、環境が保全されるようなカカオ産業の持続可能な繁栄を目指す国際的なNPOです。
ブラマー チョコレート カンパニー(米国)は世界カカオ財団の設立メンバーであり、現在も世界カカオ財団の理事として参画しています。同社はAfrican Cocoa Initiative(アフリカカカオイニシアチブ)やCocoa Livelihoods Program(カカオ生計プログラム)、Cocoa Action(カカオアクション)、Cocoa and Forests Initiative(CFI)※2といった世界カカオ財団の主力プログラムへの参画を通して、リーダーシップを発揮しています。
CFIのコミットメント達成に向け、ブラマー チョコレート カンパニー(米国)が農園やその周辺で491,309本の多目的樹木を植樹しました(コートジボワール、ガーナ)。

認証カカオ原料の取り扱い

国際フェアトレード認証(Fairtrade)

以下のグループ会社では、開発途上国の小規模生産者・労働者の持続可能な開発を促進することを目指す国際フェアトレード認証を取得しています。これら3社では、顧客の要望に応じて、フェアトレード認証の原料を使用した製品を生産・販売しています。

  • インダストリアル フード サービシズ(オーストラリア)
  • フジオイル ヨーロッパ(ベルギー)
  • ブラマー チョコレート カンパニー(米国)

国際フェアトレード認証ラベル

Fair Trade USA

ブラマー チョコレート カンパニー(米国)は、フェアトレードUSAの認証を取得しています。

レインフォレスト・アライアンス認証

以下のグループ会社では、人と自然のより良い未来を創ることを目指す国際的な認証プログラムであるレインフォレスト・アライアンス持続可能な農業基準のサプライチェーン要件に準拠しており、今後も顧客のより責任あるカカオ調達への要望に対応していきます。

  • 不二製油(株)阪南事業所・関東工場
  • インダストリアル フード サービシズ(オーストラリア)
  • フレイアバディ インドタマ(インドネシア)
  • フレイアバディ タイランド(タイ)
  • フジ グローバル チョコレート(M)(マレーシア)
  • フジオイル ヨーロッパ(ベルギー)
  • ハラルド(ブラジル)
  • ブラマー チョコレート カンパニー(米国)
  • 巴洛美巧克力製造(上海)有限公司(中国)
  • 不二製油(張家港)有限公司(中国)